2025.10.31NEW
非住宅建築の大空間、木造化の壁をどう乗り越える?(その3)
― 阿蘇くまもと空港 木造トラス屋根をめぐる二つの闘いの物語(現場編) ―
設計監理:株式会社 日建設計
工事監理:株式会社 梓設計
施 工:大成建設 株式会社
木構造屋根組工事:三井ホーム株式会社
こんにちは。S造・RC造からの非住宅建築の木造化をワンストップで支援する木構造ファブリケーター、
木構造営業部のHです。
前回に引き続き「非住宅建築の大空間、木造化の壁をどう乗り越える?」の第3弾として、今回は、阿蘇くまもと空港の現場編「現場担当Yの奮闘〜予測不能な環境と混構造の制約」をご紹介します。
木構造営業部のHです。
前回に引き続き「非住宅建築の大空間、木造化の壁をどう乗り越える?」の第3弾として、今回は、阿蘇くまもと空港の現場編「現場担当Yの奮闘〜予測不能な環境と混構造の制約」をご紹介します。
前例のない技術開発を経て、ついに設計が固まった阿蘇くまもと空港の巨大木造屋根。
しかし、本当の闘いはこれからでした。
請負工事のバトンを受け取った現場担当のYを待っていたのは、全幅168m、奥行67mという、想像を絶するスケールの現場でした。建方作業は地上12mから15mという高所で行われ、すぐ隣には飛行機の滑走路が控えています。航空法による高さ制限はもちろん、「養生シートなどを飛ばして旅客機の運行障害を起こしてはならない」という厳しい安全管理が課せられていました。
しかし、本当の闘いはこれからでした。
請負工事のバトンを受け取った現場担当のYを待っていたのは、全幅168m、奥行67mという、想像を絶するスケールの現場でした。建方作業は地上12mから15mという高所で行われ、すぐ隣には飛行機の滑走路が控えています。航空法による高さ制限はもちろん、「養生シートなどを飛ばして旅客機の運行障害を起こしてはならない」という厳しい安全管理が課せられていました。
当初、鉄骨の柱や梁の工事と、木造のトラス、ダブルシールドパネル(DSP)の施工を同時に進める中で、建設会社にとって馴染みの薄い木工事は後回しにされがちでした。不慣れな搬入作業も相まって、連日仮設事務所での作戦会議が続く日々にYは、「精神的にここが一番辛かった」と振り返ります。
この状況を打開するため、Yは徹底した段取りで挑みました。
まず、「こうしたい」という主張を現場に明確に反映させるため、重機や作業エリアの動きを日次で詳細に記した作業計画図を毎日作成。これにより日々の進捗管理が容易になり、木工事のペースを着実に掴み返していきました。
この状況を打開するため、Yは徹底した段取りで挑みました。
まず、「こうしたい」という主張を現場に明確に反映させるため、重機や作業エリアの動きを日次で詳細に記した作業計画図を毎日作成。これにより日々の進捗管理が容易になり、木工事のペースを着実に掴み返していきました。
さらに、Yは画期的な協業体制を築きます。
木造トラスと鉄骨梁の接合には、高力ボルトを締め付けるレンチの扱いや安全ネットの調整など、鉄骨工事の専門技術が必要でした。そこで、専門技術を持つ鉄骨鳶に協力を依頼。鉄骨梁の建て方に近い作業アイデアなどを採り入れてくれた彼らの力で、鉄骨と木造の作業はまさにワンチームとなり、劇的に進捗していきました。
木造トラスと鉄骨梁の接合には、高力ボルトを締め付けるレンチの扱いや安全ネットの調整など、鉄骨工事の専門技術が必要でした。そこで、専門技術を持つ鉄骨鳶に協力を依頼。鉄骨梁の建て方に近い作業アイデアなどを採り入れてくれた彼らの力で、鉄骨と木造の作業はまさにワンチームとなり、劇的に進捗していきました。
紆余曲折を経て、2021年9月から始まったトラス施工は、12月24日に最後となる230本目の木トラスの吊り込みを行い完了しました。その後、ダブルシールドパネル(DSP)の施工、内装作業と進んでいき、約1年2カ月にわたる工事は2022年11月に完了、翌年3月のグランドオープンを迎えました。
設計監理:株式会社 日建設計
工事監理:株式会社 梓設計
施 工:大成建設 株式会社
木構造屋根組工事:三井ホーム株式会社
※写真提供:熊本国際空港株式会社
開業後、一般客として広大な3階の出発ロビーを訪れたYは、現場管理中は全く気付かなかった小国杉の香りに包まれ、「無事に出来上がったのだ」という感慨を覚えたと言います。照明に美しく映え、温かみとスケール感を体感できる空間は、現場の数々の情熱が結集した、まさしく復興のシンボルとなりました。
最後に
2回にわたっての阿蘇くまもと空港編はいかがだったでしょうか。阿蘇くまもと空港にお越しの際は、少し目線をあげていただき、技術者たちの情熱が結集した木造屋根の木の温かさをぜひ体感してください!


